上村がカーニーに負けた理由 
   モーグル女子の上村愛子が、またメダルを逃した。 
 18歳で初出場した98年長野五輪で7位、以後大会ごとに6位、5位、4位と順位を上げて5大会目を迎えていた。 
 06年トリノ大会では「そろそろ(メダルを)もらえると思っていたのに」と目を腫らし、 
 10年バンクーバー大会では「なんで一段一段なんだろう」と涙した。しかし、今度はその一段が上がれなかった。   
 女王カーニーが滑り終えた時、上村は銅メダルだと思った。滑りがきれいだったし、スピードも速かったからだ。 
 ところが、表彰台に滑り込んだのはカーニーだった。上村の20.66点に対して、カーニーは21.49点。その差は0.83点。 
 メダルへの最後の「一段」は意外なほど大きかった。   
 モーグルは採点競技で、ターン、エア、スピードで争われる。最も重視されるのはターン点で合計30点満点のうち50%の15点。 
 エアとスピードは各25%で7.5点が満点になる。派手なエアに目が行きがちだが、最も大切なのはターン。 
 こぶを巧みに滑る技術を争うのが、この競技なのだ。   
 上村とカーニーの得点を比べてみた。スピードは30秒46で5.86点の上村が、31秒04で5.63点のカーニーを上回っていた。 
 ところが、エアはカーニーが4.76点で4.20の上村を引き離している。そして、最も重要なターン。10.6点の上村に対して、カーニーは11.1点。 
 審判5人のうち米国は3・9と3・5と大差、残る4人(フランス、ロシア、オーストリア、チェコ)も、いずれもカーニーを上としている。 
 上村はターンで劣っていたのだ。   
 上村のターンは、世界でもトップレベルと言われている。 
 スキーのエッジで確実に雪面をとらえ、こぶをクリアしていく。「カービング」の技術だ。 
 しかし、10年バンクーバー五輪前に採点基準が見直され、スキーを横に滑らせることへの減点が緩和された。   
 雪面を受ける力をすべて受け止める上村に対して、カーニーやデュフールラポワントはスキーのテールを小さくずらしながら、雪面に逆らわずに滑った。 
 以前なら減点となった滑りが、高得点を生んだのだ。   
 上村は試合後「点も見ずに泣いていた」と言った。「いい滑りができた」と。 
 自分ではどうしようもないルールや採点基準の変更。その中で、5度の五輪に挑戦してきた。 
 「点数は点数で」という言葉に感じたのは「点数よりも自分の最高の滑りを」という強い気持ちだった。 
 得点がどうであれ、この日1番「こぶをうまく滑った」のが上村だったことは間違いない。    
http://www.nikkansports.com/sochi2014/column/ogishima/news...
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